脅威インテリジェンスを使いこなす

Recorded Futureで何がわかるか

Recorded Futureは、インターネット上の膨大な情報源から、サイバー攻撃にかかわる情報を集めて分析し、利用者がすぐに使える形で届けるサービスです(脅威インテリジェンス)。

当社のブログで紹介したSecurityScorecardが「外から見た守りの状態」を点数にするのに対し、Recorded Futureは「攻撃者の側で何が起きているか」を伝えます。この記事では、2024年に当社で評価版を試したときの記録をもとに、仕組みと使いどころを整理します。

前提

脅威インテリジェンスとは

脅威インテリジェンスとは、攻撃者、攻撃の手口、悪用されている脆弱性、攻撃に使われるサーバーなどの情報を集めて分析し、防御に役立つ形にまとめたものです。自社を狙った攻撃にも、無差別な攻撃キャンペーンにも、早めに備えることができ、侵入の痕跡を調べるときの手がかりにもなります。

情報の集め先
  • サーフェスウェブ

    検索エンジンで見つかる、一般に公開されたWebサイトです。ニュース、セキュリティベンダーのブログ、SNSなどが含まれます。

  • ディープウェブ

    ログインが必要なサイトや、公開されていないデータベースなど、検索エンジンでは見つからない領域です。

  • ダークウェブ

    Torなどの特殊なブラウザでしか接続できない領域です。盗まれた情報の売買や、攻撃者どうしのやり取りが行われるフォーラムやマーケットがあります。

IoC(侵害の痕跡)

IoC(Indicator of Compromise)は、サーバーや端末、ネットワークが侵害されているかもしれないことを示す痕跡です。たとえば、ふだん接続しないIPアドレスやドメイン、既知のマルウェアのファイルのハッシュ値、DNSの不自然な通信パターン、アカウントの権限が引き上げられた記録などです。

脅威インテリジェンスは、このIoCが「危険なものかどうか」を、根拠とあわせて教えてくれます。

どういう仕組みで情報を届けるか

Recorded Futureは、ニュースサイト、技術系のブログ、SNS、コードの共有サイト、ペーストサイト、アンダーグラウンドのフォーラム、ダークウェブなど、100万を超える情報源から文書を集め、機械学習と自然言語処理で自動的に分析しています。

集めた情報から、IPアドレス、ドメイン、ファイルのハッシュ値、脆弱性(CVE)、マルウェア、攻撃グループといった「エンティティ」を取り出し、互いの関係を結びつけてデータベースにしています。

リスクスコアとリスクルール

IPアドレスやドメインなどのエンティティには、0〜99のリスクスコアが付きます。スコアは「リスクルール」で決まり、たとえば「マルウェアのC2サーバーとして確認された」「フィッシングに使われた」といったルールに当てはまると、その重大度に応じて点数が上がります。

リスクスコア区分
90〜99Very Malicious(非常に悪質)
65〜89Malicious(悪質)
25〜64Suspicious(疑わしい)
5〜24Unusual(通常と異なる)
0リスクの根拠が見つかっていない

どのルールに当てはまったかと、その根拠となった情報源へのリンクが一緒に表示されるため、アナリストが自分で中身を確かめられます。スコアだけを信じるのではなく、根拠をたどって判断できる点が、この製品の大きな特徴です。

Insikt Group

Recorded Futureには、Insikt Groupという調査チームがあります。攻撃グループの動向や、実際に悪用されている脆弱性などについてレポートを出しており、製品の画面からそのレポートを参照できます。

主なモジュール

何に使えるか

Recorded Futureは、目的ごとに分かれた「モジュール」を組み合わせて契約します。主なモジュールは次のとおりです。

モジュールわかること・できること
Brand Intelligence自社を装ったフィッシングサイトや偽アプリ、経営幹部になりすましたSNSアカウントを見つけ、削除依頼(テイクダウン)までを早める
Threat Intelligence自社や同じ業界を狙う攻撃グループの動きと、使われている戦術・技術・手順(TTP)を追う
Vulnerability Intelligence実際に悪用されている脆弱性を知り、どのパッチを先に当てるべきかを決める
Third-Party Intelligence取引先や関連会社のリスクを監視する。買収前の調査にも使える
SecOps IntelligenceIPアドレスやドメインなどのIoCをすばやく調べ、アラートの優先順位付け(トリアージ)を速くする。SIEMとの連携やサンドボックスも使える
Identity Intelligence従業員や顧客のIDとパスワードの漏えいを見つける
Attack Surface Intelligenceインターネットに公開された自社の資産と、対応が必要な脆弱性を洗い出す
Geopolitical Intelligence海外拠点の周辺のテロ、紛争、法規制などの地政学的なリスクを知る
Payment Fraud Intelligence漏えいしたカード情報や、ECサイトのカード情報を盗む攻撃(Magecartなど)を見つける
実例(2024年の評価版)

インテリジェンスカードで調べる

ポータルの検索窓に、気になるドメイン、メールアドレス、電話番号、IPアドレス、CVE番号などを入れると、「インテリジェンスカード」と呼ばれる要約が表示されます。当社が評価版で試したときの例です。

不審なメールに書かれたドメイン

従業員が受け取ったメールに書かれていた、鉄道会社の公式サイトに似せたドメインを検索しました。リスクスコアは66(Malicious)で、フィッシングに使われたドメインとして判定されています。

「Triggered Risk Rules」には、当てはまったリスクルールが重大度の順に並びます。そのドメインが指していたIPアドレスも表示されるため、IPアドレスの側もファイアウォールで止めておくと効果的です。フィッシングサイトのドメインは次々に変わるからです。

偽サイトと公式サイトのスクリーンショットも保存されていて、見比べることができます。

ドメインのインテリジェンスカード:リスクスコア66(Malicious)と、当てはまったリスクルール
ドメインのインテリジェンスカード:リスクスコア66(Malicious)と、当てはまったリスクルール
従業員のメールアドレス

筆者自身のメールアドレスを検索してみました。過去に情報が漏えいした写真素材サイト「123RF」の流出データに、そのメールアドレスとパスワードのハッシュ値が含まれていることがわかりました。

流出データはダークウェブなどで出回っています。業務で使うクラウドサービスでは、パスワードの使い回しをやめ、二要素認証を徹底する必要があります。

メールアドレスのインテリジェンスカード:過去の流出データへの掲載が確認できる
メールアドレスのインテリジェンスカード:過去の流出データへの掲載が確認できる
不審なSMSの送信元の電話番号

カード会社を装ったSMSが届いたので、送信元の電話番号を検索しました。リスクスコアは付いていませんでしたが、詐欺SMSとしてSNS上で注意が呼びかけられていることがわかりました。

根拠となった投稿にそのままたどり着けるため、危険かどうか、信頼できる情報かを自分たちで確かめられます。情報源には、SNSのほか、セキュリティ関連のサイト、ペーストサイト、アンダーグラウンドのフォーラム、ダークウェブなどがあります。

電話番号のインテリジェンスカード:根拠となったSNSの投稿が表示される
電話番号のインテリジェンスカード:根拠となったSNSの投稿が表示される
プロキシのログにあった外部のIPアドレス

プロキシサーバーのログから外部のIPアドレスを選んで検索すると、リスクスコア29(Suspicious)のカードが表示されました。マルウェア(Emotet)を配布するC2サーバーとして、サンドボックスの解析で確認されたことがあるIPアドレスでした。

同じサブネットの中で、ほかにリスクスコアが付いているIPアドレスもまとめて表示されるので、範囲ごとに止めることもできます。

IPアドレスのインテリジェンスカード:リスクスコア29(Suspicious)
IPアドレスのインテリジェンスカード:リスクスコア29(Suspicious)
話題になっているCVE番号

Active Directoryのドメインコントローラーを乗っ取られるおそれがある脆弱性「Zerologon」(CVE-2020-1472)を検索しました。リスクスコアは最高ランクの99で、実際に悪用されている(Exploited in the Wild)と判定されています。

影響を受ける製品、NVDの説明、各社のアドバイザリへのリンク、Insikt Groupのレポートがまとめて表示され、最初の対応をすばやく決められます。

脆弱性のインテリジェンスカード:Zerologon(CVE-2020-1472)はリスクスコア99
脆弱性のインテリジェンスカード:Zerologon(CVE-2020-1472)はリスクスコア99

どの例でも、判定の理由と元の情報源が一緒に示されるため、「危険かどうか」「信頼できる情報か」を自分たちで判断できます。

Torブラウザでしか開けないダークウェブのリークサイトも、製品に組み込まれた安全なブラウザ機能から確認できます。

連携

SIEMに組み込む

Recorded Futureは単体でも使えますが、SIEMに組み込むと効果が大きくなります。社内のログに出てくるIPアドレスやドメインを、Recorded Futureのリスクリストと自動で突き合わせ、危険な接続先を見つけられるからです。

Recorded Futureの導入イメージ:IPSやEDRのマルウェア検知と、SIEMでのIoCのルックアップに情報を提供し、SOCの初動対応を速くする
Recorded Futureの導入イメージ:IPSやEDRのマルウェア検知と、SIEMでのIoCのルックアップに情報を提供し、SOCの初動対応を速くする
Splunkとの連携
  • Recorded Future App for Splunkを入れる

    Splunkにアプリを追加し、アプリの設定画面でRecorded FutureのAPIのURLとトークンを登録します。

    Splunkのホーム画面:左のアプリ一覧にRecorded Future App for Splunkが加わる
    Splunkのホーム画面:左のアプリ一覧にRecorded Future App for Splunkが加わる
    アプリの設定:APIのURLとトークンを登録し、接続を確認する
    アプリの設定:APIのURLとトークンを登録し、接続を確認する
  • 突き合わせる社内のログを決める

    たとえば、プロキシサーバー(Squid)に記録された、PCが接続したIPアドレスと、名前解決したドメインを対象にします。

    Splunkに取り込んだプロキシのログ:接続先のIPアドレスやドメインのフィールドを確認する
    Splunkに取り込んだプロキシのログ:接続先のIPアドレスやドメインのフィールドを確認する
  • 相関(コリレーション)を設定する

    Recorded Futureのリスクリスト(ここではIPアドレスのリスト)を選び、突き合わせる社内のログのインデックスとフィールドを指定します。

    相関の設定:IPアドレスのリスクリストと、プロキシのログのフィールドを対応づける
    相関の設定:IPアドレスのリスクリストと、プロキシのログのフィールドを対応づける
  • 検出結果を確かめ、深掘りする

    リスクリストと一致したものが検出結果として一覧になります。評価版の期間が短く、社員の端末もない試験環境だったため、当社の環境では何も検出されませんでした。左の画像はRecorded Futureのサンプルです。

    一覧から個別のIoCを選ぶと、リスクスコア、当てはまったルール、関連するマルウェアなどを、Splunkの中で確認できます。

    相関による検出結果(Recorded Futureのサンプル)
    相関による検出結果(Recorded Futureのサンプル)
    深掘り:検出したIPアドレスのリスクスコア、当てはまったルール、関連するマルウェア
    深掘り:検出したIPアドレスのリスクスコア、当てはまったルール、関連するマルウェア
  • アラートを受け取る

    相関や検出ルールで見つかったものは、アプリのアラート画面にまとまります。Splunkのダッシュボードに組み込んだり、Splunkのアラート機能でメールなどに通知したりできます。

    アラートの画面:相関(Correlation)とSigmaの検出(Sigma Detection)が並ぶ
    アラートの画面:相関(Correlation)とSigmaの検出(Sigma Detection)が並ぶ
  • 検出ルール(Sigma)を使う

    Sigma、Snort、YARA形式の検出ルールに対応しています。Recorded Futureが提供するSigmaのルールは、Splunkの検索言語(SPL)に自動で変換され、どのログのどのフィールドを見るかを対応づければ使えます。

    検出されると、どのイベントがルールに当てはまったか(実行されたコマンドなど)を詳しく確認できます。

    Sigmaのルール一覧:ルールごとに対象のマルウェアやMITRE ATT&CKの手法が示される
    Sigmaのルール一覧:ルールごとに対象のマルウェアやMITRE ATT&CKの手法が示される
    Sigmaのルールの設定:SPLへの変換結果と、ログのフィールドとの対応づけ
    Sigmaのルールの設定:SPLへの変換結果と、ログのフィールドとの対応づけ
    Sigmaの検出の詳細:ルールに当てはまったイベントの中身
    Sigmaの検出の詳細:ルールに当てはまったイベントの中身

さらにSOAR製品と組み合わせれば、危険と判定された接続先をファイアウォールのルールに自動で追加する、といった運用の自動化もできます。

比較

SecurityScorecardとの違い

どちらも「外の情報」を使うサービスですが、見ているものが違います。

SecurityScorecardRecorded Future
わかること外から見た、守りの状態の点数攻撃者の側で何が起きているか
主な使い方自社と取引先の評価、改善点の把握IoCの調査、アラートのトリアージ、なりすましや漏えいの発見
主な利用者経営層、調達・リスク管理の担当者SOCやCSIRTのアナリスト
結果の形A〜Fの評価と0〜100の点数エンティティごとの0〜99のリスクスコアと根拠

取引先のリスクを点数で比べたいならSecurityScorecard、実際に起きている攻撃に素早く対応したいならRecorded Futureが向いています。Recorded FutureにもThird-Party Intelligenceがあるため、目的によっては一つにまとめることもできます。

2026年10月時点

Recorded Future社について

会社情報
項目内容
正式名称Recorded Future, Inc.
設立2009年
創業者Christopher Ahlberg、Staffan Truvé
CEOColin Mahony(2025年9月就任)
本社米国マサチューセッツ州ボストン
主な拠点ワシントンD.C.、ヨーテボリ(スウェーデン)、ロンドン、シンガポール、東京
親会社Mastercard(独立した子会社として運営)
日本法人レコーデッド・フューチャー・ジャパン株式会社(東京都)
沿革
時期できごと
2010年Google VenturesとIn-Q-Tel(米国の情報機関系の投資会社)が出資
2017年5月調査チームInsikt Groupを設立
2019年5月投資会社Insight Partnersが約7億8,000万ドルで買収
2023年4月生成AIを使った分析機能「Recorded Future AI」を発表
2024年9月Mastercardが26億5,000万ドルでの買収を発表(同年12月に完了)
2024年12月ロシア政府が「望ましくない組織」に指定
2025年9月Colin MahonyがCEOに就任
2026年5月初めて発行されたGartner Magic Quadrant for Cyberthreat Intelligence TechnologiesでLeaderに選ばれる

Gartner Peer Insightsでは、Recorded Futureの各製品が多くのレビューを集めています。良い点としては情報量の多さと根拠のたどりやすさ、不満点としてはモジュールごとの価格体系や、Identity Intelligenceの誤検知の多さが挙げられています。

まとめ

脅威インテリジェンスを活かすために

  • まず自社のIoCを調べてみる

    不審なメールのドメインやプロキシのログのIPアドレスなど、手元にあるものを検索するだけでも、何が危ないのかが見えてきます。

  • スコアより根拠を見る

    リスクスコアは目安です。どのルールに当てはまり、元の情報源が何かを確かめてから判断します。

  • SIEMにつないで自動で突き合わせる

    人が一つずつ調べるのには限界があります。社内のログとリスクリストを自動で照合する仕組みにすると、見落としが減ります。

  • 体制づくりから始める

    CSIRTを立ち上げ、専門性の高いSOCの業務は外部に任せる、という分担も現実的です。

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